第12回:現場監督と“お金の話”〜原価管理のリアル〜

原価管理

こんにちは、現場監督引退です。

現場監督として働く中で、お金の管理は常に頭を悩ませる課題です。特に、原価管理は現場運営を行ううえで避けて通れない重要な業務であり、現場の利益を守るためには欠かせません。原価管理を適切に行うことで、予算内で工事を完了させ、無駄なコストを削減することができます。

今回は、原価の構成要素について紹介しながら、どのように管理していくべきかを解説したいと思います。

原価の要素とは?

原価は大きく分けて、以下の4つの要素に分かれます。それぞれがどのように現場運営に影響を与えるかを理解することが、効果的な原価管理には欠かせません。

  1. 材料費
  2. 労務費
  3. 外注費
  4. 経費

これらはどれも、現場の予算を大きく左右する要素です。では、それぞれの要素がどのように原価に影響するのかを詳しく見ていきましょう。

材料費

材料費は、鉄筋や鉄骨、コンクリートなどの商社・メーカーから購入する資材、仮設材などのリース品、その他細々した資材・雑材など、材料だけを仕入れるものを総称して材料費といいます。特に、鉄筋、鉄骨、コンクリートなどの構造部材に用いる材料は現場の原価に占める割合が非常に大きく、無駄な材料の発注や過剰な仕入れは、予算オーバーに直結します。

予定通りの数量を使っているか

まず発注する前に、施工計画をしっかりと立て、必要な数量を正確に把握することが基本です。工事を進めながら、発注数量・使用数量が予定通りか定期的にチェックすることが重要な管理ポイントです。

数量✕単価=原価 

これがすべての基本ですので、常に数量を把握しておくことが材料費管理の鉄則です。

労務費

労務費とは、職人の技量に対する対価のことで、それを提供してくれる工事会社へ支払う費用のことです。建物のための資材は基本的に元請が手配します。鉄筋工事の加工組立、型枠大工、左官、仮設鳶、鉄骨建方、測量、などが該当します。労務費管理のポイントは、作業効率を上げ、少ない作業人員で終わらせることです。

歩掛を上げる

歩掛とは、ある作業を行う際に必要となる手間や労働力、資材、機械などの量を数値化したもので、例えば型枠工事だと10㎡/人・日という表現になります。
型枠大工一人が1日8時間で型枠を10㎡組み立てられるということを表しています。
この歩掛が支払う単価の根拠になっています。
30,000円(職人単価)/10㎡(歩掛)=3,000円/㎡
これに、型枠資材費と運搬費を足したものが、型枠組立単価となります。

ということは、この歩掛を超える、または決めた歩掛を守れるように、他工事との工程を調整し、作業員に無駄な待機時間がないように工夫することで、無駄な労務費を削減できます。また、作業の進捗状況に応じて、適切な人数を配置することも大切です。

よく"職人には前を見せなさい"と言われました。まだまだこの先にはこんなにたくさん仕事があるからどんどん進めないと終わりませんよ。というのを見せるのです。職人さんはやればやるほど稼げるので、前を見せれば仕事が伸びるという理屈です。

如何に段取り良く、仕事しやすい環境を作れるかというのがポイントになります。

外注費

専門工事会社へ資材と施工手間をセットで依頼する費用が外注費です。外注工事にはいろんな形がありますが、専門工事会社が自ら作図し、製品をつくり、現場で取り付けます。仕上工事・設備工事はほぼこれに該当するので、工事原価の大半は外注費が占めます。

外注先を選ぶ際には、価格だけでなく品質や信頼性も重要な要素です。

私の会社では購買部と連携して業者を決定します。価格、品質確保できる技術力があるか、工程に間に合うかなどの条件を総合して判断します。

外注費は常に出来高、数量、仕様の把握を

外注業者との契約の流れとして、まず業者に依頼する工事内容を決め、内訳をまとめます。それを購買部から専門業者へ見積依頼をし、回答があった業者の中から比較検討し決定します。ここで大事なのは現場でまとめる工事内訳です。契約前に数量と仕様が設計仕様と合っているかを確認することが重要です。また、工事開始後は工事の進捗(出来高)と数量・仕様を常に確認し、費用を把握しておくことが、工事原価のブレを防ぐポイントとなります。

経費

経費には工事経費、作業所経費、間接経費などがあります。直接工事に掛かる費用ではないですが、運用に係わる費用のことです。

工事経費

工事経費とは、工事に関連するさまざまな費用が含まれます。例えば、揚重機・仮設機材のリース費、運搬費、試験費や調査費、現場の運営に必要な電気・水道代など多岐にわたります。これらをすべて把握し、予算内で収める必要があります。

作業所経費

作業所経費には、職員・外注職員の給与、現場事務所の家賃や光熱費、通信費などが含まれます。これらは、工事の進行に必要な経費ではありますが、どれもコントロールしやすい項目なので、しっかりと管理し、無駄を省くことが重要です。

間接経費

間接経費とは、本社や支店を運用するための費用を現場にて負担する費用のことです。建設会社のお金を儲ける所は現場なので、こういった間接的な費用も作業所で負担します。

毎月の支払い予測と支払い額のチェックでブレを無くす

経費の管理方法のおすすめは、

最初に毎月の費用を予想した表をまとめます。

毎月の支払いごとに経費を記録し、何にどれだけ費用がかかっているのかをチェックします。

予想外の費用が発生したり、不要な経費が出てきた場合には、すぐにその原因を特定し、次の月以降の予算を見直します。

この繰り返しで、全体予算に対する経費のブレを最小限に留めることができます。

ここで一番難しいのは、それぞれの費用をいくらみておくかです。実績やデータから算出するのですが、経験で差が出るところです。

まとめ:原価管理は現場監督の最重要任務

今回は原価の構成と管理ポイントについてお話しました。

原価は以下の4つで構成されています。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

管理ポイント
材料費:数量把握
労務費:歩掛を上げること
外注費:出来高と数量・仕様を把握
経費:毎月の予測と支払いチェック

作業所運営は会社運営と同じで利益が出ないと成り立ちません。利益の追求のため、原価管理は現場監督の最重要任務です。材料費、労務費、外注費、工事経費、作業所経費、間接経費といったすべての要素をしっかりと管理し、予算内で効率的に運営することが現場監督の責任であり、腕の見せどころです。

私が現場で実践してきたように、日常から原価を意識した管理をすることで、利益を守り、現場全体の品質を保ちながら、円滑に作業を進めることが可能になります。

今回のブログでは細かなところまでは説明できませんましたが、細かな原価管理ポイントを今後紹介していきたいと思っています。


■ 次回予告

次回は、「積算・見積における原価構成」についてお話しします。

現場で使う原価と、積算・見積書に出てくる原価は、実は構成や考え方が異なります。
共通仮設工事費や現場管理費といった分類、そして積算の手順や見積の組み立て方――
現場監督として知っておきたい“予算の設計図”の読み解き方を、わかりやすく解説します。

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