第5回:現場監督の1日 〜働き方改革前と今の違い〜

現場監督

こんにちは、現場監督引退です。
今回は「現場監督の1日ってどんなスケジュールなの?」というテーマで、残業が当たり前だった以前と、時間外労働が制限された現在を比較しながら、現場監督の1日をご紹介します。
これから現場監督を目指す方、建設業界に興味がある方の参考になれば幸いです。

建設業界における「働き方改革」は、現場監督の働き方にも大きな影響を与えました。かつては“長時間労働が当たり前”だった現場も、今では労働時間の適正化が求められ、「休むべきときに休む」意識が広まりつつあります。

ここでは、働き方改革以前の現場現在の現場を比較しながら、現場監督の典型的な1日の流れを見ていきます。

時間外労働時間の上限規制

2024年4月1日から建設業の労働時間上限規制が適用され、働き方が大きく変わりました。

時間外労働が①原則月45時間、年間360時間以内、②2〜6ヶ月平均が月80時間以内、③1ヶ月100時間未満(休日労働含む)と規制されています。更に違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則付きとなりました。

では今まではどうだったかというと、2024年3月までは、建設業は法的な時間外労働の上限規制が事実上なかったため、長時間労働が慢性化していました。規制が進まなかった要因として「工期に対する柔軟性」「現場ごとの事情が多様」「人手不足」などが挙げられます。しかし、過労死防止、若手定着促進、法の平等適用を背景に5年間の規制猶予を経てついに労働時間上限の法規制が適用されました。

こういった状況でどのような1日を過ごしているかを以前と現在を比較しながら見ていきます。

1日の始まり(6:30〜8:00)

  • 以前:朝6時半〜7時には出勤し、事務所の清掃、メールチェック、工程確認、朝礼準備、職長との打合せなどでバタバタとスタート。通勤も早朝になるため、家を5時台に出ることも普通でした。
  • :会社によっては早出を禁止するルールもあり、定時スタートを徹底。必要以上に早く来ないよう、準備作業も最小限に抑える取り組みが進んでいます。
    そのため、今までは朝でも間に合っていた朝礼で使用する配置図、KY書類、指示書、作業計画書などの書類は前日に必ず準備しておくようになりました。
    こういった書類は今まで紙に印刷して手書きで記入していたものが主流でしたが、WEB上でスマホで作成できるようになり、監督や職長が仕事の合間に作成できるようになっています。

朝礼と作業開始(8:00〜8:30)

  • 共通点:全体朝礼、ラジオ体操、KY活動(危険予知)、各職長ミーティングを経て作業開始。監督は現場巡回へ。
  • 違い:今は朝礼の時間を短縮し、デジタル掲示での情報共有が主流に。効率重視の動きが加速しています。

午前中の業務(8:30〜12:00)

  • 以前:現場巡回、打合せ、段取り、書類作成、材料発注…すべてを1人でこなすのが当たり前。休む間もない午前中でした。
  • :業務分担が進み、ICTの導入により調整・発注業務も効率化。会議もオンライン化が進み、ペーパーレス化も推進されています。現場巡視の効率化のため、現場内にWEBカメラを設置し、事務所で作業状況がわかるようにしているところもあります。

昼休憩(12:00〜13:00)

  • 以前:弁当を食べながら書類整理や午後の確認をして、実質休憩なし。息をつく暇もありませんでした。
  • :「昼はきちんと休む」が定着しつつあり、事務所を離れてリフレッシュする監督も増えています。午後の集中力維持にもつながっています。

午後の業務(13:00〜17:00)

  • 以前:午後も巡回、検査、写真撮影、打合せ…トラブル対応に追われ、現場に付きっきり。夕方に向けてますます忙しくなっていきました。
  • :業務の前倒しが意識され、段取りは日中に済ませる工夫が増加。タブレットによる現場記録や、クラウド管理により事務所へ戻らず対応できる場面も増えています。

夕方から退勤まで(17:00〜19:00)

  • 以前:作業終了後も日報・写真整理・書類作成と、事務作業が山積み。ここからが、現場監督の仕事の時間という状態で、退勤は19時以降が当たり前。家庭との両立は難しい状況でした。
  • :書類の電子化や職長打合せの簡略化が進み、18時台に退勤できる現場も増えてきました。会社側の「定時退社を促す姿勢」も強まっています。

まとめ:変わりゆく現場監督の働き方

かつての現場監督は、「長く現場にいるのが美徳」とされる空気の中で、朝早くから夜遅くまで働いていました。
しかし現在は、効率的な働き方や休憩の重要性がやっと認識されつつあり、無理のない現場運営が求められています。
まだすべての現場で理想が実現しているわけではありませんが、「現場監督が長く続けられる仕事」へと変わりつつあるのは間違いありません。


働き方の比較表

時間帯以前の現場(改革前)今の現場(改革後)
6:30〜7:00早出で出勤、朝礼準備出勤時間を見直し、準備も効率化
8:00〜8:30長めの朝礼、口頭説明中心短時間で要点共有、掲示・ICT活用
8:30〜12:00巡回・調整・書類作成を1人で対応分担制、クラウド活用、オンライン化
12:00〜13:00弁当を食べながら仕事、実質休憩なしきちんと休憩を取る文化が浸透
13:00〜17:00午後も多忙で“つきっきり”状態業務の前倒し、タブレットで現場対応
17:00〜19:00日報や書類処理で残業、退勤は遅め書類電子化、打合せ短縮で18時台に退勤可能に

【まとめ】

働き方改革を経て、現場監督の働き方も少しずつですが確実に変わってきています。
以前は長時間労働が当たり前だった業界において、今では「効率的に働く」「休むべきときに休む」ことが重視されるようになってきています。
ただし、まだ現場ごとの差は大きく、改善の余地も多く残されています。現場所長の意識の差も大きく影響すると思います。
それでも、「働きやすく、続けやすい現場」を目指す動きは確実に広がっており、これから現場監督を目指す方にとっても、以前より健全な環境が整いつつあるのは間違いありません。規制が適用されたった1年ですが、劇的に環境が変わってきていると思います。
まだまだ現場監督にはやるべき仕事量が多く、根本的に改善すべき内容はたくさんありますが、残業せずに帰るのが当たり前になる日が近いうちに来ると思っています。

■ 次回予告

次回は「現場監督に必要なスキル・知識って何?」というテーマで、どんな力が現場で求められるのか、現場目線でお話ししてみようと思います。
「学校で学んだことがどう活かされるの?」といった疑問にも触れていきますので、ぜひご覧ください。

プロフィール
現場監督引退
現場監督引退

現場監督(施工管理職)としての職歴25年、そのうち現場代理人(作業所長)として12年の経歴があります。最近は管理職として、一線から退いています。
未来の現場監督に役立つ情報をこれまでの現場経験をもとに発信していきます。

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