〜よい現場は、現地を知ることから始まる〜
こんにちは、現場監督引退です。
今回からは「施工計画」シリーズをお届けします。
第1回目のテーマは「共通仮設計画」です。
共通仮設とは、工事現場の運営・管理を支えるために必要な仮設物であり、現場の安全性や効率性を大きく左右します。
一方で、「直接仮設」は、施工そのものに必要な足場や支保工などを指し、役割が異なります。
本シリーズでは、まずこの「共通仮設計画」をテーマに取り上げ、今回はその第一歩である“現地調査”に絞ってご紹介します。
図面や地図だけでは分からない現地の実情を把握することで、施工の初動を的確に進めることができるのです。
共通仮設と直接仮設の違い
まず混同しやすい「仮設工事」の分類について整理しておきましょう。
- 共通仮設工事:現場全体の運営や安全管理のために必要な仮設
例)仮囲い、ゲート、仮設事務所、仮設電気・給排水、トイレ、警備設備など - 直接仮設工事:特定の工種や施工のために必要な仮設
例)足場、支保工、仮設階段、タワークレーン、リフトなど
本記事で扱うのは、前者の共通仮設工事です。
これは建物の形や構造にかかわらず、すべての現場で必要となる「共通のインフラ整備」ともいえるものです。
共通仮設計画で検討すべき5項目

共通仮設計画において、基本の5項目を紹介します。
現場の立ち上り時には、まずこれらを検討し共通仮設計画をまとめていきます。
- 現地調査
- 仮囲い
- ゲート
- インフラ(仮設電気・上下水道)
- 仮設事務所
現地調査による敷地条件の確認
まず最初にやるべきことは「現地調査」です。
図面上やGoogle map等で敷地周辺の環境を想定することはできますが、絶対必要なのは目で見て現地の状況を把握することです。
以下に現場調査で確認すべきことをまとめました。
- 工事敷地はどの範囲か。境界鋲があり明確になっているか。
- 敷地に隣接しているものは何か。また、それと敷地境界はどのくらい離れているか。
- 敷地内や周辺に工事の障害となるものはないか。周辺から越境してきているものはないか。
- 隣地の仕上げの状態。破損しているものはないか
- 工事敷地までの搬入ルートの確認
- 地形測量による敷地全体の把握
それでは一つずつ解説していきます。
Ⅰ.工事敷地はどの範囲か。境界鋲があり明確になっているか。
まずは建物が建つ位置と工事で使用できる敷地がどの範囲かを確認します。場合によっては広い敷地内の一部に建物をつくるというケースもありますので、発注者側の担当者と一緒に工事敷地の範囲を明確にすることと、工事用としてどこまで使用できるかを確認しておきましょう。
また、隣地が他人の敷地の場合は、敷地境界に境界鋲が設置されているか確認が必要です。工事が繰り返されていたり、田舎の場合は敷地境界が明確になっていない場合が多いです。その場合は、発注者から土地家屋調査士に依頼してもらい、境界を確定しておきましょう。発注者お抱えの土地家屋調査士がいる場合は、過去に確定してた敷地データを持っていたりしますので、まずは問い合わせしてみることです。
施工中や竣工後のトラブル防止の為、着工前に必ず明確にしておきましょう。


Ⅱ.敷地に隣接しているものは何か。また、それと敷地境界はどのくらい離れているか。
敷地に隣接しているものが道路なのか建物なのかを確認します。道路なら幅員を確認し、工事車両が通れるか、ゲートが作れるかを確認します。建物なら用途と敷地境界からの距離も確認しておきましょう。また、敷地に面して埋設されているインフラ※や架空線がないかもチェックします。インフラ※があれば境界からの距離を確認しておきましょう。のちの施工計画に役立ちます。
※インフラ:電気、上下水道、ガス、電話、光ケーブル、ケーブルテレビ等のこと
Ⅲ.敷地内や周辺に工事の障害となるものはないか。周辺から越境してきているものはないか。
例えば、隣地から工事敷地内に木の枝が伸びていたり、塀が越境していたり、見えないところで、隣の基礎が越境していたりすることがあります。木の枝なんかは勝手に切るとトラブルの元になります。必ず確認しましょう。
こういう場合、直接お隣さんと交渉するのはトラブルの元です。土地の所有者同士話し合うのがベストなので、発注者とまず相談しましょう。
Ⅳ.隣地の仕上げの状態。破損しているものはないか
工事が終わり、無事引渡しが完了。ほっと一息ついたと思えば近隣さんからクレームの連絡。
”うちの土間が割れてるんだけど。工事の影響だと思うんだけど。”
こんな経験がありませんか?
工事中や完成後の近隣とのトラブル防止にためにも、着工前に隣地の仕上げの状態や劣化の程度を確認して記録に残しておくことは必須です。
自分達でやるのは大変なので、家屋調査をしてくれる業者さんに依頼しましょう。
家屋調査をする範囲は、地図上での下調べと、現地で敷地からの距離や建物の状態を見て判断しましょう。
Ⅴ.工事敷地までの搬入ルートの確認
敷地に隣接の道路の状態は先程確認しましたが、もう少し範囲を広げ、敷地周辺の道路状況を実際見て確認しましょう。地図上では気づかない多くの情報が得られます。大型車が通れる幅が無い道路や一方通行などの交通規制、通学路等、実際に見ると工事車両のルートが見えてきます。近隣の方に最も影響の少ないルートを探しましょう。
Ⅵ.地形測量による敷地全体の把握
我々施工者が乗り込む際には、設計図が完成されており、設計段階で測量されていることも多くありますが、私の場合、必ず別で地形測量を行い、正確な情報を持つようにしています。
地形測量とは敷地の形状、高低差、工作物の位置、仕上げの情報等、敷地のあらゆる情報を測量し、図面化します。もちろん自分でやることはできないので測量屋さんに依頼します。
これの情報をもとに、設計図で記載されている建物の基準高さ、建物位置、外構高さが妥当かどうかを検証します。
このデータは測量されたものなので、仮設計画や外構図作成、またそれらの数量拾いにとても役立ちます。時間とお金がかかることですが、必ず後で返ってきますのでケチらず実施したい内容です。

まとめ
共通仮設計画は、施工を円滑に進めるための「現場づくりの設計図」とも言える存在です。
中でも最初に取り組むべきは、現地調査による正確な情報把握です。
境界の明確化や搬入ルート、隣地状況、インフラの有無といった情報は、すべて後々の仮設計画や近隣対応、原価管理にも直結してきます。
現地をよく歩き、観察し、対話することが何よりの計画の土台になるのです。
次回予告
次回は、「施工計画② 共通仮設計画の実践編」として、
仮囲い・ゲート計画をテーマにお話しします。
安全・動線・美観・防犯――
あらゆる要素を兼ね備えた“現場の顔”となる部分を、どのように計画するのか。
私の実務経験から、設計のポイントと注意点を詳しく解説していきます。

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