こんにちは、現場監督引退です。
前回は、共通仮設計画の中でも「仮囲い」と「ゲート」についてお話ししました。仮囲いが決まって「さあ現場が動き出す」というタイミングで、次に必要になるのが電気と水です。
電気・水がなければ、職人は作業できません。照明もつかない、コンクリートも打てない、トイレも使えない。ところが段取りを怠ると申請が間に合わず、工事開始日に仮設電源がないという最悪の事態になります。
今回は、現場の“ライフライン”である仮設電気・仮設給排水の計画について、現場代理人としての実務ポイントを解説します。
1. 仮設電気計画の前に(申請タイミングが大切)
仮設電気で最も多い失敗は「申請が遅れて、着工日に電気がない」です。
電力会社への申請から仮設電源の使用開始までには、1〜2ヶ月ほどかかります。地域や時期(年度末など繁忙期)によってはさらに時間がかかることもあります。「申請すれば翌日つながる」は大きな誤解です。
申請の流れ(一般的な手順)
- 電力会社の工事担当窓口へ相談・申請
- 電力会社による現地確認・工事計画
- 引込柱(仮設電柱)の設置工事
- 引込線の接続・メーター設置
- 使用開始
電気の引込位置によって、仮設電柱やキュービクルの配置が変わり、仮囲いの計画にも影響します。そのため、仮設電気の計画は施工計画②でお話しした仮囲いの計画と同時に進めることが重要です。
現場代理人のひとこと:「仮設電気の申請は、契約後すぐに動くくらいの意識が必要です。図面がなくても電力会社に相談はできます。まずは相談の電話を入れることから始めてください」
2. 仮設電源の容量計画
仮設電源の容量が不足すると、工事中にブレーカーが頻繁に落ちて作業が止まります。かといって過大な容量を申請すると基本料金が高くなります。
受電方式は契約電力によって分かれます。50kW未満の場合は低圧引込み(電力会社の変圧器で100V/200Vに変圧されて供給)となり、50kW以上の場合は高圧受電となり、6,600Vを敷地内のキュービクルで100V/200Vに降圧します。キュービクルは需要家側の設置・管理になるため、容量計画の段階で受電方式を決めておく必要があります。なお、実際の区分や手続きは電力会社との協議で確認してください。
主要機器の消費電力の目安(動力と電灯に分けて示します)
動力(200V・三相)
| 機器名 | 消費電力(1台あたり) |
|---|---|
| 溶接機 | 11〜15kW |
| 水中ポンプ | 3.8〜8.2kW(口径による) |
| ハイウォッシャー(高圧洗浄機) | 3.7kW |
| モルタルミキサー/モルタルポンプ | 3.7〜7.5kW |
| 耐火被覆プラント | 15kW |
| 事務所エアコン | 4〜5kW |
電灯(100V・単相)
| 機器名 | 消費電力(1台あたり) |
|---|---|
| 投光器(LED) | 0.1〜0.5kW/台 |
| 電動工具(丸鋸・インパクト等) | 0.5〜1.5kW/台 |
| シャーレンチ | 1.3kW |
| 高速カッター | 1.4kW |
| バイブレーター | 0.5kW |
| 保安灯・WEBカメラ等 | 0.25〜1kW |
ピーク時の同時使用を想定して合計容量を算出します。全機器が同時に動くことはないため、需要率(同時使用率)を考慮して設定するのが実務的です。なお、タワークレーンは機種によって定格容量の幅が大きいため、この表には含めていません。使用する現場では、採用機種の定格を個別に確認して容量に加えてください。
事務所の電気容量は、規模やエアコンの台数で大きく変わります。大きな現場では、照明・コンセント・OA機器などの電灯とエアコンで合計数十kWに達することもあるため、一律の目安で決めず、機器を積み上げて見積もるのが確実です。
3. 分電盤(盤)の配置計画|効率的な盤割りの考え方
盤を1か所に集中させると、そこから現場の隅々まで電工ドラムなどで電源を引き回すことになります。引き回しが多くなるほど、作業の効率が下がります。一方で、盤の数を増やせば仮設電気工事のコスト自体は高くなるため、効率とコストのバランスを見て配置を決める必要があります。

配置の目安として、私の場合は電灯盤は500㎡に1か所程度にしています。外壁まわりでは、コンセントが30mに1か所程度あると作業がしやすくなります。動力盤はもう少し広い範囲に対応できるので、750㎡に1か所程度が目安です。
※上記の数値はあくまで一例です。実際の配置は、現場の形状や広さ、作業内容に応じて検討してください。
エリア分割で盤を分散配置するのが効率的です。
| 盤の種類(例) | 担当エリア |
|---|---|
| 揚重エリア盤(動力) | タワークレーン・荷受けステージ周辺 |
| 躯体・内装エリア盤(電灯・動力) | 各階の電動工具・照明 |
| 外部足場エリア盤(電灯コンセント) | 外部足場・外壁作業エリア |
| 事務所・詰所盤(電灯・動力) | 現場事務所・休憩室・トイレ |
工事の進捗に合わせて盤を移設・撤去できる計画にしておくことも重要です。この「盤の移設計画」まで施工計画に落とし込んでおくと、現場がスムーズに進みます。
また、全ての分電盤に漏電遮断器(ELB)の設置は必須です。感電事故防止の基本として、計画段階で必ず確認してください。
4. 仮設照明の計画|法的基準と照度の確保
「とりあえず照明を付ける」では不十分です。仮設照明には法的な照度基準があります。
法的根拠:労働安全衛生規則 第604条(照度)
| 作業の区分 | 照度基準 |
|---|---|
| 精密な作業 | 300ルクス以上 |
| 普通の作業 | 150ルクス以上 |
| 粗な作業 | 70ルクス以上 |
なお、通路・階段の照度は第604条の表には含まれておらず、法令に通路専用の数値基準はありません。実務ではJISの推奨値を目安に、危険度に応じて20〜50ルクスあたりで計画します。
この基準が対象とするのは、作業を行う場所の作業面の照度です。普通の作業にあたる作業場所では、150ルクス以上を確保することが基本になります。特に夜間作業・地下作業・閉鎖空間では照度が不足しやすいため、作業面の明るさに注意が必要です。
理想は、現場全体を明るくすることです。しかし現実的には、コストも手間もかかります。私の場合は、全体は最低限、通行に支障がない程度の明るさにとどめておき、実際に作業を行うときは、別途LED投光機などの局所照明で照度を補うようにしています。
配置の目安として、私の場合は60W相当のLED電球を6m×6mの広さに1つ、スラブから電線で吊り下げて、高さ2.5m程度の位置に設置していました。この配置で床面の照度は10〜20ルクス程度になり、通路としては通行可能な明るさとしての目安になります。
現在の主流はLED照明です。従来のハロゲン投光器と比べて消費電力が大幅に少なく、発熱も少ないため安全面でも優れています。配線ルートは分電盤の配置と合わせて計画し、照明回路と動力回路を分けて計画するのが基本です。
5. JITANスイッチで時間とコストを削減
仮設照明を計画したら、合わせて検討してほしいのがJITANスイッチです。JITANスイッチとは、時間帯や明るさに応じて照明・電源を自動でON/OFFするタイマー式スイッチのことです。
| 項目 | 効果 |
|---|---|
| 消し忘れゼロ | 退場後の電気つけっぱなしを防止 |
| 電気代削減 | 不要な時間帯の通電をカット |
| 管理手間の削減 | 毎日のON/OFF作業が不要 |
| 防犯効果 | 夜間の定時点灯で不審者を抑止 |
設定例:朝7時 ON → 夕方18時 OFF(日中作業の場合)。夜間の防犯照明は別回路で残す設定も可能です。コストは数千円〜数万円程度で、初期投資に対する効果が大きいのが特徴です。
現場代理人のひとこと:「JITANスイッチの良さは、電気代の節約以上に、職員が照明を消して回らなくて済むことです。毎日のことなので、時短の効果は積み重なると大きくなります。ただし、事前に配線系統をよく検討しておくことが前提です。WEBカメラとセットで管理すれば、かなり有効なツールになります。盤の計画と一緒に検討してみてください」
6. 仮設給水の計画|水をどうやって上げるか・ハイウォッシャー(高圧洗浄機)の活用
水道局への申請
仮設給水も、電気と同様に早めの申請が必要です。着工予定日の1〜2ヶ月前には申請を済ませておくのが基本です。
引込みは、本設の引込みを前倒しして工事し、そのまま仮設に利用できれば理想です。引込み工事が現場の初期に終わっていると、後々かなり助かります。
引込みの径は、杭工事での水の使用量に左右されます。杭が場所打ちの場合は40A以上が必要で、既成杭なら25A以上が目安です。引込みの計画を立てる段階で、まず杭工事業者に必要な水量を確認してください。なお、本設の引込み径が大きすぎる場合は、仮設引込みでかまいません。
水は“自然には上がらない”
地上から水を引いても、上階には自然に水は届きません。場内の配管は25Aか20Aで回すことが多いのですが、水道の圧力(直圧)だけで上げられるのは実務的には10m前後、建物の3階程度までが目安です。それより高い場所へは直圧では届かないため、中継が必要になります。中継タンクに一度水を溜めて、ポンプで上げ直す(ポンプアップ)のが基本の形です。
| 方法 | 特徴 | 適した場面 |
|---|---|---|
| 揚水ポンプ(加圧ポンプ) | 配管で直接圧送 | 中・高層の標準的な方法 |
| ハイウォッシャー(高圧洗浄機) | 高圧圧送・洗浄兼用 | 水湿し・散水養生・打設前後の清掃・上階給水 |
ハイウォッシャー(高圧洗浄機)とは
ハイウォッシャー(高圧洗浄機)は、高圧洗浄機能を持った仮設給水ポンプで、現場では主に以下の用途で活躍します。

- 生コン打設前後の清掃(型枠・機材の洗浄)
- 打設前の型枠・コンクリートの水湿し
- コンクリートの散水養生
- 上階への加圧給水(縦配管に接続して圧送)
- ダンプ・ミキサー車・重機などの車両洗浄
計画のポイント
- 給水配管を最後まで残せる場所を考える
- ハイウォッシャー設置場所には蛇口を2つ設ける
- 上階への縦配管ルートを仮囲い計画と合わせて先行検討する
- 高圧洗浄時の排水先・濁水処理をセットで計画する
- 電源容量の確認必須(3.7kW・200V)
- ゲートには給水設備を設ける
現場代理人のひとこと:高層建物でなければ、最初からハイウォッシャーで上階へ水を上げる方法もあります。私の場合は、最高で60mまでハイウォッシャーで上げたことがあります。
7. 仮設排水・濁水処理の計画
仮設排水で絶対に守らなければならないのが、濁水・セメント廃水等をそのまま流さないということです。コンクリート打設後の洗浄水やセメントを含む排水は強アルカリ性で、そのまま側溝や河川に流すと水質汚濁防止法違反になります。
対策:沈殿槽の設置
- 沈殿槽(ノッチタンク)を設けて、濁水を一度貯めてから上澄みを排水するのが基本
- 沈殿槽の位置は、ハイウォッシャー(高圧洗浄機)の設置場所と合わせて計画する
- 定期的な清掃・汚泥処理の計画も必要
- 排水先(公共下水・側溝)の確認と、必要に応じて下水道局への届出
- 排水先の近くに川や海がある場合は、特に注意が必要です。濁水が流れ出ると漁業組合と揉める可能性があり、人の生活にも影響します
現場代理人のひとこと:「濁水の垂れ流しは一発で行政指導を受けます。近隣からの通報も多い。見た目にも分かりやすい違反なので、絶対に手を抜かないでください」
「本設配管を早期に施工し、それを利用して排水できれば効率がいいです」
8. 仮設トイレの計画|女性用は必須・出入り口分離が基本
法的基準
仮設トイレには明確な法的基準があります。

法的根拠:労働安全衛生規則 第628条
- 男女別のトイレ設置が義務
- 女性用トイレの設置は法的要件であり省略不可
女性作業員が1名でもいれば、女性用トイレの設置は必須です。こういう法的基準があるということを理解しておきましょう。「女性作業員がいないから不要」という判断も通用しません。現場には検査員・設計者・施主担当者など、さまざまな女性が訪れるからです。
台数の法的基準(第628条)
男性用大便所:同時就業人数60人以内につき1基(超える場合は、超える60人またはその端数ごとに1基追加)
男性用小便所:同時就業人数30人以内につき1箇所(超える場合は、超える30人またはその端数ごとに1箇所追加)
女性用便所:同時就業人数20人以内につき1基(超える場合は、超える20人またはその端数ごとに1基追加)
台数の目安(実務目安)
| 同時作業人員 | 必要台数(実務目安) |
|---|---|
| 10人まで | 1基以上 |
| 20人まで | 2基以上 |
| 50人まで | 3基以上 |
| 51人以上 | 50人増すごとに1基追加 |
出入り口の分離が重要
- 男女で出入り口・アプローチを完全に分ける
- 視線が交わらない配置にする(向かい合わせはNG)
- 女性トイレは死角になりやすい場所を避ける(防犯上の配慮)
- 女性作業員の着替えスペースと兼用できるよう計画するケースも増えている
使いやすさの工夫
- 動線上(作業エリアから近い場所)に配置する
- 奥まった場所に置きすぎると使われず、別の問題が起きる
- 便器は洋式・ウォシュレット付きが最近の主流です
- 清掃は、できれば専門の清掃員を雇いたいところです。清潔に保てますし、職人の時間を使うのはもったいないからです
現場代理人のひとこと:「女性が働きやすい現場づくりは、採用・定着にも直結します。‘とりあえず置いた’ではなく、使いやすさまで考えることが現場代理人の仕事です。トイレの環境は、現場の品格を表します」
9. 現地調査チェックリスト(仮設ライフライン関連)
仮設電気
- 電力会社の既設引込点の位置
- 仮設電柱を立てるスペースの有無
仮設給排水
- 既設水道の引込み位置と口径
- 排水先(側溝・下水)の位置と管径
- 沈殿槽を設置するスペース
10. よくある失敗と対策
失敗例①:申請が遅れて着工日に電気・水がない
現場の段取りが全て狂います。職人は来ているのに作業できないという最悪の事態に。
失敗例②:容量不足でブレーカーが毎日落ちる
作業効率が著しく低下し、職人からのクレームが絶えなくなります。
失敗例③:照明が暗くてケガにつながる
暗い場所では足元が見えにくく、つまずきや転倒が起きやすくなります。照明の明るさは、法的基準を満たすためだけでなく、ケガを防ぐためにも重要です。
失敗例④:濁水をそのまま排水して行政指導を受ける
近隣からの通報も多く、一発で現場の信頼が失われます。
11. 仮設ライフライン計画チェックリスト
仮設電気・照明
- 電力会社への申請を着工1〜2ヶ月前に済ませた
- ピーク時の同時使用電力を想定した容量設定になっている
- 分電盤はエリア分割で効率的に配置した
- 漏電遮断器(ELB)を全盤に設置した
- 作業区分ごとの照度基準(労働安全衛生規則 第604条)を確認した
- 通路はJISの推奨値を目安に、危険度に応じて20〜50ルクス程度を確保した
- JITANスイッチを照明回路に採用した
仮設給水
- 水道局への申請タイミングを確認・対応した
- 上階への揚水方法(ポンプ・ハイウォッシャー)を決定した
- 縦配管ルートを先行検討した
- ハイウォッシャー(高圧洗浄機)の電源容量(200V・3.7kW)を確保した
- 引込みの方法(本設の前倒し利用か、仮設引込みか)を決めた
- 杭工事業者に必要水量を確認し、引込み径を決めた(場所打ち40A以上・既成杭25A以上)
- 直圧が届かない高さへの中継方法(中継タンク+ポンプアップ)を決めた
- 設置場所の蛇口とゲートの給水設備を計画した
仮設排水
- 沈殿槽を設置した
- 排水先(公共下水・本設・仮設)を確認した
- 下水道局への届出を行った
- 汚泥の定期清掃計画を立てた
- 排水先の近くに川・海がないか確認した
仮設トイレ
- 女性用トイレを設置した
- 男女の出入り口・アプローチを完全に分離した
- 人数に見合った個数を計画した
- 汲み取り車のルートを確保した
- 清掃スケジュールと管理担当を決めた、又は清掃員の手配をした
- 洋式・ウォシュレット付きの便器を選んだ
12. まとめ
仮設電気・給排水の計画は、現場の“ライフライン”そのものです。これが整っていなければ、職人は動けず、現場は止まります。
申請は早く、容量は余裕を持って、配置は使う人の目線で計画する。この3つを守るだけで、現場の立ち上がりは格段にスムーズになります。
次回予告
次回は、「施工計画④|仮設足場の計画」についてお話しします。足場は工事全体の安全と効率を左右する重要な設備です。種類の選定から設置計画、解体タイミングまで、現場代理人として押さえておくべき実務ポイントをお届けします。

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